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クラス ×イト
第2章 だメンず 【乾英太1】
※ ※
その日の放課後――。
「要二くん、遅いね」
三生が、ぼそっと呟いた。その時、教室に残っていたのは、僕と三生の二人だけ。
昼休みに佐倉先生の言伝を受け。要二は今、職員室に行っている。担任の北村先生と、何やら話をしているらしかった。
別に頼まれたわけでもなかったけど、僕たちは何となく要二が戻るのを待っていた。でも、もうかなりの時間を待ったけど、要二は一向に教室に戻って来ない。
窓際の壁に凭れて、並んで床に座っていた僕たち二人。放課後のグラウンドからは、練習に励む運動部員たちの声が聴こえてきていた。
僕ら『D3』の三人は何処の部活にも所属していなくて、つまりは帰宅部。この城平高校は部活が盛んとは言えないから、帰宅部であることに対してそれほど肩身の狭い想いををすることはなかったけども……。
同じ年頃の彼らが、何かに打ち込む音色。それを耳にしていると、少しだけ焦ってしまうのは気のせいではないのだろう。
その時の三生が、同じように感じていたのかは知らない。それでも不意に、僕にこんなことを訊ねていた。
「英太くん。最近も――書いてるの?」
「ああ……うん。少しづつ、だけど」
「良かったら、また読ませてよ」
「そうだね……書き上げたら、要二と三生には」
一応、そうは答えたけど。僕にはあまり、その時が来る実感はなかった。
「……」
だって今、僕が書いているのは……。
別に三生が悪いわけじゃないけど、何となく居心地が悪くて。だから僕は立ち上がって、三生に告げた。
「少し様子を見て来るよ。まだ時間がかかるようなら、先に帰ろう」
「うん。そうだね」
頷いた三生を教室に残して、僕は一人で職員室へと向かった。