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クラス ×イト
第7章 アらガう 【堂林亮伍】
「じゃあな」
瀬山はそう言うと、俺に背を向けた。
「待て!」
それを見て、俺は堪らずに叫んでいた。
もう勝負は、決まっている。『みっともないから、止めておけよ』頭の中で別の俺が、そう言っていた。だけど、もう止まれない。
「どうしてだ……? 瀬山、教えてくれよ」
「――?」
「俺がお前だったら……プロだってアメリカだって、きっと何処までも……バカみたいに目指すんだろうよ。だけど、お前は……それだけの力がありながら……なんで?」
「無駄だから」
「え……?」
瀬山は指先でボールを回しながら、静かに語った。
「去年――地区の選抜に参加してわかったんだ。身長180そこそこ――多少、巧くて速いだけ。俺くらいの奴は、捨てるほどいる。上には上がいるんだよ」
冷静に話す瀬山に、俺は激高する。
「この野郎っ!」
俺は瀬山に掴みかかり――
「亮伍――止めて!」
慌てて海藤が、二人の元に駆け寄っていた。
俺は構わず瀬山の襟首を掴み、その澄ました顔を睨みつける。
「上には上がいるだとっ? 偉そうに言うなよ。そんなこと、俺の方が知ってんだよ! だったら、そこで抗えばいいだろ。必死に練習でも何でも、やるだけやれよ。そしたら……お前だったら、きっと……」
怒りは徐々に静まり、やがて懇願するような俺の声の響き。
それを聞いて、瀬山が次に言った言葉。それは、俺の想像しないものだった。
「悪いな、堂林――俺はお前みたいに、強くないんだ」