この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
クラス ×イト
第2章 だメンず 【乾英太1】
「そう」

 藍山さんは特に表情を変えるでもなく、無感情にそう答えただけ。

 でも、その代わりに――

「……!」

 何かに気がついたようにした後、藍山さんは徐に右手を動かすと、それを僕の方に伸ばし、彼女の手が僕の肩口に触れた。

「……!?」

 僕は微動だに出来ずに、彼女の行為を見守る。その緊張の中で、彼女の手が僕の肩に残す、微かな感触だけが伝わっていた。

 それもほんの数秒。僕から手を離すと、彼女は言う。

「ゴミ……ついてたから」

「あ……」

 そう言われて見た彼女の指は、小さな紙屑を摘まんでいた。

 たったそれだけのことに、僕は昂揚していて。だけど藍山さんにしてみれば、それは何でもないことなのだろう。

「じゃあ――サヨナラ」

 彼女はそう言い残すと、僕に背を向けてその場から去って行った。


「……」

 僕は暫くの間、その場から動けなかった。

 挙動不審な自分の態度が、酷くカッコ悪く思えて。そして今更ながら、思う。


『それ、何の本?』


 そのたった一言が、何で訊けなかったんだろう――と。

 だけど、僕はわかっていた。その一言は、とても簡単で、でも僕にはとても難しいことなんだ。

 だって僕は、結局。紙屑を取ってくれた彼女に「ありがとう」も。「さよなら」という簡単な挨拶すら、返していないのだから……。

/579ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ