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第9章 けつダン 【去河要二】

「は？　あ、いや……仕事で動き回って、三キロ以上痩せたし。そのせいで、ちっとは締まって見えるの……かも？」

　言われ慣れない言葉と、先生の醸し出す雰囲気に、俺はドギマギとしていた。

「ううん、それだけじゃないわ。きっと、今の君は――成長を遂げようとしてる」

「そんな……まだまだ全然だよ。俺なんて、必死にもがいてるだけ」

「そんな風に感じるのも真っ直ぐに進んでる、その証拠なんだって思うの。それに比べれば六つも年上なのに、私って……駄目。未だに学校にも慣れないし、そんなことだから……」

　急に沈み込むように佐倉先生は、俯いて肩を落とす。

「なにか、あったのかよ？」

　俺が訊ねると、先生はふっと寂しげな笑みを浮かべ、こう言った。

「私ね――北村先生に、フラれちゃった」

「え……？」

　突然、伝えられたその事実に、俺の胸はざわめく。