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クラス ×イト
第9章 けつダン 【去河要二】
 頻りにフラつく佐倉先生。その腕を引きながら、俺は夜道を歩いていた。

「先生、どっちだよ」

「もうすぐ……。この先の、アパートだから」

 やれやれ、やっと着いたか……。俺はふっと息をついた。こんな状態の先生を連れて、もう既に三十分近く歩き続けたから、俺もヘロヘロに疲れている。

 最も佐倉先生と一緒にいるという、心的な負担もかなりでかい。脈拍数だけなら、どんな激しい運動にも匹敵するんじゃねえの……。

「このアパート?」

「うん。そうだよ」

 新築っぽい小綺麗なアパート。佐倉先生の部屋は、その一階にあった。

 何とか無事に送り届け――

「じゃあ、俺は……これで」

 ドアの外で、俺はそう告げる。

「ごめんなさい。すっかり、迷惑をかけちゃったね」

 部屋の中から、佐倉先生は少し恥ずかしそうな顔。どうやら、少しは酔いが覚めたようだった。

「その……あんま、落ち込むなよな」

「ありがとう……話を聞いてもらえて、私も少しスッキリしたみたい」

 と、先生は穏やかに微笑む。

 一つ正直に言うなら、俺の中に妙な期待があったのは間違いない。だが当然、そんなことが実際にあるはずもねえ……。

 そんな自分に少し呆れ、俺が帰ろうとした時だった。


「じゃあな、先生。俺、帰――る!」


 突如として俺の手を掴み、佐倉先生は俺を部屋の中に引き入れる。

 それと同時に――


 えっ――!?


 佐倉先生の顔が、俺のすぐ近くにあって……。というか、これは……!


 ちゅ……くちゅ。


 俺のファーストキスってやつは、アルコールとニンニクの香り……と、共に。
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