この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
クラスの中に漂う、微妙な兆候。それをよりはっきりと意識したのは、その数日後のことだった――。
トイレに行った私はそこで、山村さんと顔を合わせていた。微かな変化の兆しは、この山村佳奈からも感じられていたのだ。
「……」
「……!」
不意に訪れていた、二人だけの空間。そこに流れるのは本来、気まずい空気だけの筈。
赤緒さんに比べれば、彼女の方が幾分わかり易い。以前から私に対する敵意を、山村さんはまるで隠そうとはしていなかったから……。
だから、黙って去ろうとする。なのに、その私を――
「ねえ、ちょっと――待ってよ」
山村さんが、呼び止めていた。
足を止めた私に向かい合うようにして、彼女は立った。
「少し私と――話してみない」
「構わないけど……なにを?」
「そう聞かれちゃうと……アレなんだけど、さ」
と、苦笑した山村さんは、今まで私が見たことのない顔をしている。そして、やや迷ったようにしてから、私に言った。
「私ってさ――藍山さんのこと、ずっと嫌ってたんだ」
「それは――知ってる」
「なんでだと、思う?」
「気に入らない――から?」
「それは、そうなんだけど……そうじゃ、なくってさ」
「……?」
山村さんの意図は不明。そして、その行動も不可解だった。
彼女の右手が、不意に私へと伸びてくる。
「ねえ――髪、触っていい?」
「いい……けど」
私がそう答えると――山村さんの指先が、私の髪を撫ぜつける。
そして――
「フフ、――やっぱ、綺麗だよね。素肌も……」
微笑する山村さんの手は、次に私の頬をそっと触れた。
トイレに行った私はそこで、山村さんと顔を合わせていた。微かな変化の兆しは、この山村佳奈からも感じられていたのだ。
「……」
「……!」
不意に訪れていた、二人だけの空間。そこに流れるのは本来、気まずい空気だけの筈。
赤緒さんに比べれば、彼女の方が幾分わかり易い。以前から私に対する敵意を、山村さんはまるで隠そうとはしていなかったから……。
だから、黙って去ろうとする。なのに、その私を――
「ねえ、ちょっと――待ってよ」
山村さんが、呼び止めていた。
足を止めた私に向かい合うようにして、彼女は立った。
「少し私と――話してみない」
「構わないけど……なにを?」
「そう聞かれちゃうと……アレなんだけど、さ」
と、苦笑した山村さんは、今まで私が見たことのない顔をしている。そして、やや迷ったようにしてから、私に言った。
「私ってさ――藍山さんのこと、ずっと嫌ってたんだ」
「それは――知ってる」
「なんでだと、思う?」
「気に入らない――から?」
「それは、そうなんだけど……そうじゃ、なくってさ」
「……?」
山村さんの意図は不明。そして、その行動も不可解だった。
彼女の右手が、不意に私へと伸びてくる。
「ねえ――髪、触っていい?」
「いい……けど」
私がそう答えると――山村さんの指先が、私の髪を撫ぜつける。
そして――
「フフ、――やっぱ、綺麗だよね。素肌も……」
微笑する山村さんの手は、次に私の頬をそっと触れた。