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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 クラスの中に漂う、微妙な兆候。それをよりはっきりと意識したのは、その数日後のことだった――。

 トイレに行った私はそこで、山村さんと顔を合わせていた。微かな変化の兆しは、この山村佳奈からも感じられていたのだ。


「……」

「……!」


 不意に訪れていた、二人だけの空間。そこに流れるのは本来、気まずい空気だけの筈。

 赤緒さんに比べれば、彼女の方が幾分わかり易い。以前から私に対する敵意を、山村さんはまるで隠そうとはしていなかったから……。

 だから、黙って去ろうとする。なのに、その私を――


「ねえ、ちょっと――待ってよ」

 山村さんが、呼び止めていた。

 足を止めた私に向かい合うようにして、彼女は立った。


「少し私と――話してみない」

「構わないけど……なにを?」

「そう聞かれちゃうと……アレなんだけど、さ」

 と、苦笑した山村さんは、今まで私が見たことのない顔をしている。そして、やや迷ったようにしてから、私に言った。

「私ってさ――藍山さんのこと、ずっと嫌ってたんだ」

「それは――知ってる」

「なんでだと、思う?」

「気に入らない――から?」

「それは、そうなんだけど……そうじゃ、なくってさ」

「……?」

 山村さんの意図は不明。そして、その行動も不可解だった。

 彼女の右手が、不意に私へと伸びてくる。

「ねえ――髪、触っていい?」

「いい……けど」

 私がそう答えると――山村さんの指先が、私の髪を撫ぜつける。

 そして――

「フフ、――やっぱ、綺麗だよね。素肌も……」


 微笑する山村さんの手は、次に私の頬をそっと触れた。
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