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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 そうして彼女がじっと私を見ていたから、私はふと視線を逸らす。

 洗面台の鏡は、私たちの奇妙な接触を映し出していた。その中で微笑んだ山村さんが、私に言う。

「私、もしかすると――女の子の方が、好きなのかも」

「え――?」

 思わぬ言葉に視線を戻すと、山村さんはプッと吹き出した。

「アハハ! ほんの冗談だし。マジな顔、しないでくれる」

「……」

「ゴメン、怒った?」

「別に……」

 私は怒ったり、できないから……。だけど、山村さんの態度は更に不可解だから、それに戸惑っていたのは確かだった。

「たぶん私って、綺麗なものは好き。けど、それが同じ年の女の子だと、素直には好きになれないんだ」

「それは、何故?」

「無意識に、自分と比べちゃうの。そして、叶わないって思った時に……好きじゃなく……気持ちの中に、『憧れ』や『嫉妬』が生まれる」

「憧れと……嫉妬?」

「そう……全く違うみたいで、実は裏表……最近、そうなんだって気づいたんだ」

 彼女の声が弱まり、私の頬に触れた手が微かに震えていた。

「なにか――悩んでる、の?」 

「私さ……クラスっていう集団の中で、自分の位置を探してた……けど、ホントは自分のことすら、なにも……わかってない」

 彼女も、また迷っている……。その言葉は私に、そんなことを感じさせた。
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