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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 山村さんは、ふっとした笑顔を浮かべ、私に訊く。

「藍山さんには、今の私――どんな風に、映ってる?」

「私は……」

 どう答えたら、いいのだろう。私がそう考えていた時だった。トイレのドアが開き、そこに彼女が姿を現していたのは……。


「なにを――してるの?」

 私たち二人を見つけ、赤緒さんはそう訊ねる。

 山村さんは、私の頬から右手を引くと――

「別に、なんでも」

 そう答えて、トイレから出て行った。

 トイレは次に、私と赤緒さんの二人の空間となり。そこにはさっきとは比べ物にならないくらいの、不穏な空気が流れ始めていた。

「……」

 ドアの前に立つ赤緒さんは、何処か異様な雰囲気を纏う。その脇を通り過ぎ、私はトイレのドアに手をかけた。

 すると――

「西のこと――どうする気?」

 厳しい口調。彼女は私を責めるように、そう言葉を発する。

「どうも、しない……。私には何も、できそうにないから」

「そう……」

 短くそう言った後、彼女はやや緊張感を解いた。だから私は、そのまま出て行けば良かったのだろう。

 けれども――

「どうして――貴女が、それを気にするの?」

 私は期せずして、そう訪ね。

「邪魔を、しないで。私が望むのは……それだけ」


 赤緒さんは、内なる想いを押し殺すようにして、そう告げた。
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