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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
「――そして鎌倉幕府の成立に伴い、それと主従関係を結んだ武士のことを御家人といいます。それが日本に於ける、封建社会の始まりとする説もありますが――」
「……」
私が見る限り、この日の佐倉先生は、少し落ち着いているように思えた。何処か淀みがなく、粛々と授業を進めているように映っている。
それは、教鞭を取るその態度に留まらなかった。
「ねえ――堂林くん! 聴いてくれているのかしら?」
「は? ああ、すんません」
居眠りをしていた堂林くんを注意すると、教室内がどっと沸く。その様な些細なやり取り一つにも、先生の有する余裕みたいなものが滲むようで。
以前の佐倉先生を思えば、その変化は決して小さいものではなかった。
そう感じてしまうのも、少し前の佐倉先生の様子が気になっていたからだろう。それと比べれば、あまりにも違うように思えた。その一時、彼女が酷く身をやつしているように、私の目には映っていたから……。
「……」
さっき耳にしたばかりの噂話を、私は気にかけていた。今の佐倉先生に訪れている変化と、その噂話が無関係でないのだとするのなら……。
『彼』の話を聞きたい。私は不意に、その様に思っていた。