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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 暫く歩く間に、また途切れている会話。

「あと、十分くらい」

「そう……」

 道中の半分以上を進む間に、私たちが交わした言葉はたったのそれだけ。

 そう言えば、あれは何時だったろう――。


『どんな本を――読んでいるの?』


 突如として――恐らく初めて、乾くんが私に話しかけてくれたのは……。

 けれど、あれ以来――その意味で乾くんには、変化はない。私に干渉してくることも、やはりほぼ皆無だった。

 何故、そんな風に思っているのだろう?

 誰に対しても会話が成立しないこと自体を、私の方が意識したことなんてなかった筈だ。寧ろ黙っていられるのなら、その方がずっと気楽。そんな私が、今に限って何故――。

 敢えてその理由を定めるのなら、彼が『作者』で私が『読者』ということくらいだろう。私は彼の書いている小説を密かに読み、その結末に何らかの希望を抱いていた。

 だからそれまでは、乾くんに対する干渉を自然と避けていて。そんな自分にジレンマを感じてしまう、そんな感じではないのか……。

「……」

 だけど、それも納得のいく理屈ではなかった。それに彼の小説が、私たち二人にリンクするものなら、このままの二人では結末は永遠に訪れないような、気もして……。

 その考えも、何処か矛盾してるように思えた。

「……」

 訳もわからずに考えを巡らせた私は、たぶん乾くんと話したがっている自分を認める。そして頭の中では何を話そうかと、自然に話題を探し始めていた。
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