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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
「母ちゃん! 友達が来たから、少しいいか?」

 去河くんは店の奥にそう叫ぶと、私たちを同じ商店街の喫茶店へと連れ立った。

 落ち着いた雰囲気のレトロな店内には、他のお客はいない。その奥へと進もうとしてる二人に、私はこう言った。

「少しだけ去河くんと、二人で話したいの」

 そう聞いて、顔を見合わせる二人。

「押しかけた上に、勝手なこと言って、ごめんなさい」

 乾くんはたぶん、あの噂は知らない。それに私が去河くんから聞きたいことは、とても個人的なことだから、決して邪険にしたつもりではなかった。

 そう思いつつも、私は言葉足らずな自分を嫌悪してる。

 それなのに、乾くんは――

「いいよ。僕はこっちの席で、本を読んでるから」

 気にする様子もなく、自らカウンターの端の席に座っていた。

「じゃあ、俺らは――あっちの席でいいか」

「うん……」

 私と去河くんは、入口から一番遠いテーブルの席へ――。

「……」

 だけど、どう話したらいいのか。此処に至りながら、私は迷う。

 以前から囁かれていた、北村先生と佐倉先生の噂。それに狼狽えていた佐倉先生の顔。その時、クラス全員の前で明かされたのは、去河くんの気持ち――。

 最近、ふと耳にした新たな噂。沈んでいた佐倉先生と、一転したかのようなその後の変化――。

 それらを総じて、私が感じたことは幾つかある。でもそれは、何も定かではないから。

 そして、私が求めているのは、在りし日の楓姉さんの気持ち、だった。
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