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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 私が去河くんに重ね合わせていたのは、楓姉さんの姿。そこに見出したいものは、叶わぬ恋のその行方。

 でも何もかもが微か過ぎる。けれどそれでも私は些細なヒントを、頑ななまでに彼へと求めてしまっていた。


「お、これはこれは。要二くん、角に置けないんだね」

 店主らしき品の良い老人が、テーブルにグラスの水を運ぶと言った。去河くんとは、顔見知りのようだ。

「そういうのじゃねえから――唯の友達だよ」

「……」

 友達――何気に口にしたであろうその言葉が、少しだけ新鮮。そう感じた時に私は、無暗に気を張るのを止めた。

 そしてもし、本当に私が彼らの友達に含まれるのだと、したのなら。一方的に求めるだけでは駄目……たぶん、そうなのだ。


「それで――俺に話って、なんだよ?」

「その前に――やっぱり、乾くんも一緒に」

「は? だって、お前が――」

「お願い……」

 私がそう言うと、去河くんは席に乾くんを呼び寄せた。

「いいの……かな?」

 そう言いながら、乾くんは去河くんの隣りに座る。

 それから、黙って私を見ていた二人に――私は言った。


「私には――姉がいたの」

「姉が……いた?」

「姉は三年前に――自殺、してる」


 私は予定に反して、誰にも言えなかった、その話を始めている。
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