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クラス ×イト
第2章 だメンず 【乾英太1】
 目をギュッと瞑り、苦悶にも似た表情の三生。

「くっ……あ……あっ……」

 長身のその身体は、徐々に前屈みになっていた。

 差し出された両手は、赤緒さんの頭部を、掴もうとして掴めずにいて。

 歯がゆさを覚えたまま、役を成さずに小刻みに震える。

 そんな三生の反応の一切を介さずに、赤緒さんの頭はリズミカルに揺れて。

 その一定の動きは容赦なく――それでいて、どこか冷めていた。


 そして僕は――そこから奏でられる音を、耳にしている。

 ちゅる――ちゅぷ――ちゅぱ――。

「……」

 ホントに口で……してる。その微かで確実なイヤらしい音が、死角となっている僕にその事実を知らしめていた。

 でも、何故そんなことを……? 赤緒さんの行為を不思議に感じながら、僕の心音は激しさを増す。

 傍観者の僕にとってそれは、とても居心地が悪く心臓に悪い――長い時間。

 だけど実際は、ほんの数十秒くらいだったみたい。


「ダメ! あ……ああっ、うう……あ……はぁ……」


 三生は一段と激しく悶えて。立ってられないくらいに、膝はがくがくと笑う。

 同時に赤緒さんは、前後の動きを停止させていた――。

 その時、教室には――それまでに感じたことのない、どこか空虚な雰囲気が漂う。

 僕は唖然と二人の姿を眺めながら――

「……」

 その行為が終わったのだと、辛うじて悟っていた。
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