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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
 そう感じた私は、ふと去河くんにこう訊ねていた。

「去河くんは――もう、平気なの?」

「まあな……。少なくとも、変に思い詰めたりはしねえよ。佐倉先生が、ちゃんと向き合ってくれたからな」

「そう……。それと、これは余計なことなのかも知れないけれど――佐倉先生の方も少し、元気になったみたい」

「それ、ホントか?」

「あ、僕もそれは思った。一皮むけたって感じで」

 と、答えたのは乾くんに、去河くんが冷めた目を向ける。

「お前が言うと、なんか生意気でムカつくがな」

「それよりさ――実際、佐倉先生とはどうなの? 要二、肝心なことは、全然言わないんだし……」

「それはいいんだよ。その内、話すかもって言ってんだろ」

「ちぇっ……大人ぶっちゃってさ」

 乾くんは、すねたようにそう呟いた。

 一方の去河くんは、改めて私に告げる。

「とにかくよ。俺とすれば、それが聞ければ十分だ」

 その時の顔が、とても満足げな顔だったから。それを目の当たりにした私は、噂話を口にすることを止めた。

 そして――

「今日は、ありがとう。二人と話ができて――良かった」

 こんな時に、自然に微笑むことができたら……。私は無表情な自分が、少し恨めしい。

 けれど――

「そっか――なら、俺としても甲斐があったぜ」

「うん。僕も話が聞けて……良かったって思う」

 二人はそう言って、私をホッとさせるような、その笑顔を向けてくれた。
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