この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
去河くんと別れ、その帰り道でのこと――。
十字路に差掛り、私は乾くんに言う。
「私はこの道だから――」
「あ、そっか。じゃあ、これで――」
「……」
「……」
そう言葉を交わしておきながら、その場に留まったままの二人。奇妙な名残惜しさと、沈黙の気まずさが、そこに入り混じっていた。
すると――
「お姉さんのこと、どうなのかな? 要二から色々な話は、聞けたけど……それだけじゃ、結局は……」
「いいの……。流石にそこまで、望んでいた訳ではないから。去河くんには、感謝してる」
「当時から学校に居た先生とか、お姉さんの友達とか、その辺りに当たってみるのは?」
「それも考えたけれど……周囲を嗅ぎまわるような真似は、私にはできないし、したくもないの。それで何かがわかっても、楓姉さんが帰ることはないし……」
「そう、だよね。だけど、それなら……藍山さんが知りたいことって?」
「私が求めるのは、北村先生の真実の言葉……その中にある楓姉さんの想いを、私は知りたい。けれども、もし先生に否定されてしまったら、それでお終いになる。私はたぶん、そうなってしまうのが、怖い……」
自分でも明確でなかった心の靄が、自然と言葉に変わってゆく。私は話しながら、自分でも少し驚いていた。
そして、不意に乾くんが、呟いた言葉――。
「お姉さんの気持ち……それが表れているようなものが、残されていれば……」
「――!」
それが、私をハッとさせる。
「あの、どうかしたの?」
「お願い――」
「藍山さん……?」
「乾くんに――読んでほしい本があるの」
期せずして私は――乾くんに、その様な頼み事をしていた。
十字路に差掛り、私は乾くんに言う。
「私はこの道だから――」
「あ、そっか。じゃあ、これで――」
「……」
「……」
そう言葉を交わしておきながら、その場に留まったままの二人。奇妙な名残惜しさと、沈黙の気まずさが、そこに入り混じっていた。
すると――
「お姉さんのこと、どうなのかな? 要二から色々な話は、聞けたけど……それだけじゃ、結局は……」
「いいの……。流石にそこまで、望んでいた訳ではないから。去河くんには、感謝してる」
「当時から学校に居た先生とか、お姉さんの友達とか、その辺りに当たってみるのは?」
「それも考えたけれど……周囲を嗅ぎまわるような真似は、私にはできないし、したくもないの。それで何かがわかっても、楓姉さんが帰ることはないし……」
「そう、だよね。だけど、それなら……藍山さんが知りたいことって?」
「私が求めるのは、北村先生の真実の言葉……その中にある楓姉さんの想いを、私は知りたい。けれども、もし先生に否定されてしまったら、それでお終いになる。私はたぶん、そうなってしまうのが、怖い……」
自分でも明確でなかった心の靄が、自然と言葉に変わってゆく。私は話しながら、自分でも少し驚いていた。
そして、不意に乾くんが、呟いた言葉――。
「お姉さんの気持ち……それが表れているようなものが、残されていれば……」
「――!」
それが、私をハッとさせる。
「あの、どうかしたの?」
「お願い――」
「藍山さん……?」
「乾くんに――読んでほしい本があるの」
期せずして私は――乾くんに、その様な頼み事をしていた。