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クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
※ ※
自分の部屋に戻った私は、鞄を置くと本棚の前に立つ。
「……」
そうして暫く、居並ぶ本の背表紙を眺めた後――。
確か……この辺りの、後ろに……?
おぼろなげな記憶を辿ると、棚の上の段から本を引き出し、それらを床に積んでゆく。本棚には二層に本が並べてあり、私は奥に隠れていた本を順に確かめているのだった。
そうして、本棚の三段目に差掛った時だ。
「――!」
私は探していた、二冊の本に見つける。
「……」
散らかした本を片づけると、私は机に向かう。机の上に置いた二冊の本――暫くの間その表紙を、何気にじっと眺めていた。
ふと手を伸ばし、その一冊をパラリと捲る。けれど、活字に目を奔らせることなく、すぐにそれを閉じた。
「楓姉さん……」
不意にその名を呟き、すっと両目を瞑る。
三年前――もう楓姉さんが、帰らないと知った後。姉さんの部屋に入った私は、机の上に置いてあった、この二冊の本を見つけていた。
その後――私はたぶん、この本たちを読んでいる。たぶんと言ったのは、その内容をまるで憶えてないからだ。
只、それを読んでいる自分が、さめざめと涙を流していたことは――憶えている。
そして、暗く何処までも果てなく沈み行く如き――自分の心を憶えている。