この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】

    ※    ※


 自分の部屋に戻った私は、鞄を置くと本棚の前に立つ。

「……」

 そうして暫く、居並ぶ本の背表紙を眺めた後――。

 確か……この辺りの、後ろに……?

 おぼろなげな記憶を辿ると、棚の上の段から本を引き出し、それらを床に積んでゆく。本棚には二層に本が並べてあり、私は奥に隠れていた本を順に確かめているのだった。

 そうして、本棚の三段目に差掛った時だ。

「――!」

 私は探していた、二冊の本に見つける。


「……」

 散らかした本を片づけると、私は机に向かう。机の上に置いた二冊の本――暫くの間その表紙を、何気にじっと眺めていた。

 ふと手を伸ばし、その一冊をパラリと捲る。けれど、活字に目を奔らせることなく、すぐにそれを閉じた。

「楓姉さん……」

 不意にその名を呟き、すっと両目を瞑る。

 三年前――もう楓姉さんが、帰らないと知った後。姉さんの部屋に入った私は、机の上に置いてあった、この二冊の本を見つけていた。

 その後――私はたぶん、この本たちを読んでいる。たぶんと言ったのは、その内容をまるで憶えてないからだ。

 只、それを読んでいる自分が、さめざめと涙を流していたことは――憶えている。

 そして、暗く何処までも果てなく沈み行く如き――自分の心を憶えている。
/579ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ