この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第10章 せッきン 【藍山栞2】
あの時の私は何故、泣いていたのだろう?
帰らない楓姉さんのことを、一心に想ってのことか――。
或いは、その物語にこの心を、揺さぶられていた、ものなのか。
私はそれを確かめることをしなかった。それ以来――この二冊の本に触れることさえ、一度もなかった。
その後、幾多の本の途中にありながら、私は結局は甘えていたのかもしれない。
途中という――それは、私にとってぬるま湯であった。たった今、そうだとわかった。
それをジレンマと感じながら、乾くんに「知りたい」と答えながらも。本当の私は知ることから、逃げ続けている……きっと、そうだった。
あの時――本を読みながら、絶望していた自分。それを、繰り返すのが嫌だった。
「……」
そして私は今、この二冊の本を乾くんに委ねようとしている。
それで何かが明らかになるのかなんて、全く期待などしてはいなくて。或いは私自身が、そこに大した意味を、見出していないのかもしれないのに……。
それでも、向き合えなかった私にとっては、辛うじて踏み出そうとした、その――ほんの半歩だった。
帰らない楓姉さんのことを、一心に想ってのことか――。
或いは、その物語にこの心を、揺さぶられていた、ものなのか。
私はそれを確かめることをしなかった。それ以来――この二冊の本に触れることさえ、一度もなかった。
その後、幾多の本の途中にありながら、私は結局は甘えていたのかもしれない。
途中という――それは、私にとってぬるま湯であった。たった今、そうだとわかった。
それをジレンマと感じながら、乾くんに「知りたい」と答えながらも。本当の私は知ることから、逃げ続けている……きっと、そうだった。
あの時――本を読みながら、絶望していた自分。それを、繰り返すのが嫌だった。
「……」
そして私は今、この二冊の本を乾くんに委ねようとしている。
それで何かが明らかになるのかなんて、全く期待などしてはいなくて。或いは私自身が、そこに大した意味を、見出していないのかもしれないのに……。
それでも、向き合えなかった私にとっては、辛うじて踏み出そうとした、その――ほんの半歩だった。