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第11章 マえぶレ 【乾英太3】
 どうやら朝、僕が本を受け取っているのを、三生に見られたみたい。

 それにしても最近の三生の態度は、かなり以前とは違っている。それはやっぱり、『アレ以来』のことと考えて、たぶん間違いはなかった。

「ちょっと事情があって、藍山さんから本を借りたんだ」

 僕がとりあえず、そう答えるが――

「事情って、どんな? 本を貸してもらうなんて、いつの間にそんな関係になったの?」

 三生は嬉々として、そんな質問を重ねてきている。

 前のように控え目な三生なら、こんな踏み入った聞き方はしていないだろう。そもそも『D3』の中でも恋愛じみた話になる時は(ほぼ無かったけど)、恥ずかしそうにして口を紡ぐようなタイプだった。

「そんな関係って……少しだけ、話すようになっただけだよ」

 本来なら三生にだって話せることはなるべく正直に、話しておきたいと思うけども。それでも今の段階で、藍山さんの話を聞かせるのは気が咎めた。

 それに加え、僕はそこはかとない危うさを今の三生に覚えている。それは前に二人で、赤緒さんの後をつけた(僕にそのつもりはなかったけど)、あの日から。

「それより、三生は――あれから、なにかあった?」

 あの日、三生は意を決して赤緒礼華に告白するも結果的には、全く相手にされなかったとのことだけど……。

 だけど三生は不思議なくらい、落ち込んだ様子をまるで感じさせてはいない。
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