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クラス ×イト
第11章 マえぶレ 【乾英太3】
「えっ……藍山さん、と……!」

 その名を耳にした僕の脳裏には、否応なく――


『もし仮に――俺が藍山のことが気になると言ったら、乾はどうする?』


 以前そう話した、瀬山くんの言葉が浮かんでいた。

 そうして驚いている僕に構う様子もなく、瀬山くんは淡々と話を続けた。

「俺、前にアイツに言われたんだ。貴方もまだ『途中』にいる……ってさ。その時は、変な女だって思ったくらいだが。不思議と最近、その言葉が妙に気になるんだよ」

「途中……」

 その言葉にそこはかとなく彼女らしらを感じながら、心に留める。だけど今の僕が気にしたのは、その部分ではなかった。

「ねえ、瀬山くん……ひとつ、訊いてもいい?」

「どうぞ」

「もしかして、瀬山くん……藍山さんのこと、好き、なの?」

「……!」

 瀬山くんの顔色が、少し変わる。でも直ぐに穏やかに微笑すると、僕にこんなことを語りかけた。

「乾――知ってるか? 『好き』って言葉は、意外と便利なんだぜ」

「好き……が、便利?」

「そうだ。少なくとも『愛してる』に比べたら、圧倒的に便利さ。お前――それがどうしてなのか、わかるか?」

「ごめん……さっぱり」

 それは僕の本音。たぶん頭の中は、ポッカリと空っぽになっている。
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