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クラス ×イト
第11章 マえぶレ 【乾英太3】
 そんな僕の疑問を察したように、瀬山くんはこう話した。

「まあ、大して意味のある話じゃないから、そんなに気にするな。それから、西の手前だってこともある。俺だって流石に、藍山に言い寄ったりするつもりはない」

「そっか……」

 そう聞けばやっぱり、僕は内心ではホッとしてる。

 そうだよね……。そもそも、瀬山くんには赤緒さんがいるし。それに今も言ったように、西くんは彼の親友だ。

 ともかく、そうして話が一段落した時に、心に余裕が生まれたせいだろうか。僕は不意に、そのことを思い出していた。

「今まですっかり忘れてたのに、今更かもしれないけど……。瀬山くん前に、僕に相談があるって言ってたよね?」

 それはある日の昼休みのこと。その時は、要二の休学騒ぎがあって。結局はそれ以来、こうして瀬山くんと話す機会もなく、今日まで至ってしまっていた。


「ああ、その話か――」

 瀬山くんは僕から視線を外して、やや考え込むようにしてから――

「やっぱ、止めておく、か……」

 ちょっと寂しげに、そう呟く。

「あの……ごめんね。あの時に、僕が聞かなかったから……」

「そうじゃない。あの時は、ふと逃げ込みたくなっただけだった。誰かに聞いてもらうこと自体に、意味なんてない。結局は俺自身……あと一歩を踏み出せるか、どうか。部活を辞めてみたのも、そうなのかもしれない。俺はその切っ掛けを、探しているんだろうな……」

「……」

 『一歩』という言葉が、さっきの『途中』という言葉にリンクしたような、感覚。

 僕から見たら、何もかもが羨ましく思えるような彼。だがそんな瀬山くんも、間違いなく何かに悩んでいた。それが何かわからなくても、僕はそう確信していた。

 そして――

「さて――帰るか」

 と、瀬山くんは席を立つ。そして帰る前、最後に僕にこう言った。


「乾――俺はやっぱり、お前を応援するよ」
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