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クラス ×イト
第11章 マえぶレ 【乾英太3】
 ともかく、早く起き上がらなくちゃ………。

 そう思い僕がようやく起き上がろうとすると、何故だか知らないけど市原さんは急に、両手を僕の頬に当てた。


「え……?」

「さっき素顔見た時も、思ったんだけど――ね」

「な、なにを……?」

「こうして近くで見ると、乾くんって可愛い顔してるんだなぁって」

「そ、そんなことない、よっ」

 まるで予想もしてない言葉に思わず照れながら、それでもようやく僕は市原さんの上から身体を退けた。

 すると、市原さんの方も上体を起こしたけど――

「ウフフフ――」

 彼女は立とうとはせずに、階段に座ったまま意味ありげな笑みを浮かべてる。

 なんなの、一体……? 僕の方からぶつかっといて何だけども。とにかく、市原さんのその態度が僕には不可解過ぎた。

 そうして、ふと彼女を眺めていた時――。

「あ、額の処――もしかして僕、怪我させちゃったかな?」

 市原さんのこめかみの辺りに、小さな青アザを見つける。

 だけど――

「あ、コレ? 違う違う。これは元からだから、気にすることないの」

 市原さんはそのアザを指先で撫ぜながら、そう言った。

「それよりもさ――」

「え?」

 と――その瞬間、僕たちが耳にしていたのは、始業のチャイム。

「私たち、遅刻だね」


 市原さんはそう言いながらも、何ともにこやかに笑った。
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