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クラス ×イト
第11章 マえぶレ 【乾英太3】
 それを思い浮べた僕は、慌てて答える。

「ぼ、僕は――なにも聞いてない」

「本当に?」

「うん……絶対」

 実際に三生はそのことを言ってないのだし、変に疑われるのは僕としても嫌だ。そう感じながら、僕は赤緒さんを見据え言った。


「オイ――なんの騒ぎだ」

 そんな処に姿を現し、声をかけてきたのは瀬山くんだった。

 その顔を見た赤緒さんは、ふっとその表情を緩める。

「別に――大したことじゃないわ」

 瀬山くんにそう言いながらも――赤緒さんは手にしていた紙切れを隠すように、背中の後ろでクシャリと丸めた。そして何事もなかったように、自分の席へ座ってゆく。


「……?」

 その様子を眺めていると――

「乾、礼華に何か言われたのか?」

 そんな僕を、気にしてくれたのだろう。瀬山くんは僕の傍らに近づくと、小声でそんなことを訊ねていた。

「うんん。僕は別に――」

 何気にそう答えながらも、僕には幾つか気になることが増えている。


 あの紙に書かれていたこと――。そこに絡んでいるらしい、三生の不可解な態度――。そして、赤緒さんと瀬山くんの間に感じる、温度差みたいなもの――。

 それと、僕や藍山さんの想いも、そうだったのかもしれない――。


 一気に集約して弾け散るような……全てが何らかの前触れであるように感じられた。
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