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クラス ×イト
第12章 ラんマん 【市原 茜】
「ごめん!」
「えっと……乾くん?」
突然――深々と頭を下げる乾くんを前にして、私は戸惑っちゃているの。
「僕は今、力になってあげたい人がいて……そのことで、精一杯で……だから……さ」
乾くんは肩を怒らせながら、必死に言葉を絞り出してるみたいに見えた。
「乾くんは、その人が――好きなの?」
「あ……うん…………好き」
「それってさ――もしかして、藍山さん?」
私がそう訊くと――
「あっ……あの……それは、ね……」
乾くんは、さっきよりもずっと――その顔をリンゴみたいに、真っ赤っかにしちゃうから。だから……ね。
「……」
その姿を見ちゃった、私は……。
「そっか、わかったよ。じゃあ、友達でいい。それなら、平気?」
ニコッと笑って、できるだけあっさりと、そう言ってたんだ。
あまりにもあっけらかんとした私の態度に、乾くんも少し面食らったみたい。
「あ、それは……もちろん。あれ? もしかして、僕……変に勘違いしちゃったのかな。だとしたら、なんだか恥ずかしいよね……」
「アハハ! うんん、気にしなくて大丈夫だよ。ふーん、でもまさか――乾くんが藍山さんと、なんてちょっと意外かなぁ」
「あ、あのさ! 僕が一方的に、そうなだけで……特に何も、ないんだ。だから、ごめん……このことはさ――」
「うん、いいよ。秘密にしとくね」
私は乾くんと、そんな約束をしていた。