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クラス ×イト
第13章 ぼウそウ 【喜嶋三生】
「礼華……その話は、もういい」
「意気地なし!」
「わかってくれ。そういう問題じゃ、ないんだ」
「だったら、ずっと今のままで――いいの?」
「ああ……いいさ」
「……」
瀬山くんは終始穏やかで、感情的になっているのは赤緒さんの方だった。二人の声が、それを表していた。
「……」
もう、見つかる訳には……いかない。
既に『肝心』と言える部分を聞いてしまっていた僕は、更にキュッと身を潜めて気配を消した。
暫くの沈黙を破り、再び声を発していたのは――赤緒さん。
「私には……瀬山のことを、縛る資格なんて……もう」
「礼華……お前、まさか……また?」
「だとしたら、どうだと言うの!」
「……」
「どの道、このまま二人で身を寄せ合ったって、虚しいだけ……。瀬山だって、そう思ってるんでしょ?」
「俺は礼華には、感謝してる。しかし――もしお前が俺を必要としないと言うのなら、その時はお前に従うよ」
「ズルい……私に決めろだ、なんて……」
「悪いな……貧弱ながら、それは俺の意思でもある」
「もし仮に……私が一生一緒にいて、と言ったら?」
「当然……そうするつもりだ」
そう答えた瀬山くんは、歩を進めて教室を出ようとしている。だけど去る前、最後にこう付け加えていた。
「礼華の為に、そうならないことを願うよ。お前は自由なんだ。お前こそ……俺に縛られる必要はないだろ」