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クラス ×イト
第13章 ぼウそウ 【喜嶋三生】
「……」

 瀬山くんのいなくなった教室には、静けさが戻っていた。

 だけど赤緒さんの流れ出すような感情が、僕の身体にも緊張を強いているみたいだと感じる。

 そして――


「縛られてなんか……私は……私の望むものは……」


 その時、赤緒の声は震えていた。

 『女帝』という、僕らの間で勝手につけていた別称。そのイメージからあまりにもかけ離れて、その響きは霞んでしまうくらい弱々しくて……。

「……」

 そう感じた僕は、不意にその表情が知りたいと思った。今の彼女の姿を、この目で確かめたいとの衝動だった。

 そうして少しだけ身体をずらそうと、床に右手をついた瞬間。

 キシッ――と、床板が小さな音を立てる。


「誰なの――?」

 その声にビクリと、僕の身体が振るえた。

 すると、ツカツカと足音を鳴らし、赤尾さんが教壇の前に立つ。そして、怯える僕を見つけて、キッと鋭い視線で睨みつけていた。

 その瞳に突き動かされるように、僕はその場で立ち上がる。

「あ……あ……」

 緊張に苛まれて、思うように言葉が出ない。僕は一旦、唾をゴクリと呑み込む。

 そんな僕を待たずに、赤緒さんは厳しくこう問い質した。

「今の話、聞いてたの?」

「あの……僕は……」

 ようやく発せられた声。だけど、その先どう言えばいいのか、僕は迷う。


 ガラッ――と再び開かれた扉から、英太くんが顔を見せたのは――そんな場面だった。
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