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第13章 ぼウそウ 【喜嶋三生】

　恐らく、今夜も……。

　その僕の予感を裏付けるように、彼女が向かったのは例の喫茶店だった。

「……」

　店の前にある街路樹の陰に身を潜めながら、僕は何気に店内を窺う。何やら話している彼女の横顔だけを、辛うじて確認。どうやら、相手の男はもう来ているらしい。

　僕が目撃する四度目となる媛交の一場面。だけど、その様子はそれまでと明らかに違っていた。チラリと見える、赤緒さんの表情が険しい。何やら頻りに、言い争いをしてる雰囲気だった。

　そうして暫くし――怒ったようにして席を立っている、赤緒さん。

　彼女が店を出る気配を察し、僕は咄嗟に喫茶店の前から離れると、隣のコインパーキングの方へと姿を隠す。そして、壁と看板の間から、喫茶店の出入り口を窺っていた。


　やがて勢いよく店の扉が開き、出て来た赤緒さんがツカツカと早足で歩き始める。

　すると、慌ててその後を追って来たのは、いつもの媛交相手の男と――

「――!?」

　その男より若そうな、もう一人の茶髪の男。その二人目の姿を見て、僕は些かギョッとしていた。

　二人は赤緒さんの腕を掴むと、その行く手を遮る。そして苦笑を浮かべながら、彼女の機嫌を取ろうとしている様子。


「……」

　僕はその会話を聞こうとして、三人の方にソロリと近づいていった。