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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
 救急車で病院に搬送されたのは、深夜の二時近く。傷の処置を受けた三生は、安静に睡眠を取っており、その容態には心配はいらない、ということ。

 だけども、傷の箇所は左手首――らしく。その事実が、否応なく僕たちの結論を、その方向へと導いていた。

 自分の知り得たことを話し終え、そして要二は僕に訊く。


『三生のやつ最近、様子が変だったみたいだぜ。家に帰る時間が深夜になることも、あったらしい。俺が学校にいた時は感じなかったが――英太、お前は何か気がついていなかったのか?』

「……!」

 要二に言われて、僕はようやく、そこに考えを巡らせた。三生の様子が変だったのは、もうかなり前から知っている。その発端となっている場面には、立ち会ってさえいるのだ。

『何か……あったんだな?』

「う、うん……」

『そうか……。長電話するのも、なんだし。学校が終わったら店まで来いよ。話はその時だ。それから様子を見て、できれば病院にも行ってやりたいしな』

「わかった……。要二、とにかく――教えてくれて、ありがとう」

『当たり前だろ。じゃあな――』

 そう言って、要二との通話は終わった。

「……」

 僕に『当たり前だろ』と言った、要二の言葉が何となく心にズキッと響いた。要二と違って三生の側にいた僕は、その『当たり前』のことが果たしてできていたのか……。

「乾くん、平気?」

 ずっと側で待っていてくれた市原さんが、僕を心配そうにしている。

「今は……まだ、わからないんだ」

 そんな彼女に対して、僕はそんな風にしか答えられずにいた。


 ともかく、僕の――否、僕たちの長い一日が、そこから始まる。

 様々な各々の想いを、互いにぶつけ合い、もしかしたら傷つけ合いかねない……そんな一日が。
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