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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
「急に、ごめんね。でも、ちょっと気になることが、あるんだ……」
僕が話し出すと、赤緒さんは言った。
「それって、もしかして――喜嶋のことを言ってるの?」
「――!?」
先に彼女からその名を出され、僕は些か驚く。
「え……あ、うん。実は、そうなんだけど……」
「彼がどんな様子なのか、友達である貴方は――何か知ってるようね」
「そ、それは……」
まるで出鼻を挫くような問いかけに、僕は戸惑った。
そもそも僕としても、まだ確かなことを知っている訳ではない。それを何処まで彼女に伝えるべきなのか、その判断は難しかった。
「とりあえず、大したことない……それだけは、聞いてる」
「そう……」
僕の言葉を聞き、赤緒さんはホッと安堵したような顔を見せる。
そのタイミングに乗じるように、今度は僕が全く逆の疑問を投げかけた。
「赤緒さんは、三生のこと……なにか、知ってるのかな?」
するとその瞬間――赤緒さんが、キッと鋭い目つきに変わる。
「どうして、そう思うの?」
「あ、いや……」
急に警戒を顕わにした彼女に、圧倒されそうな僕。クラス内の力関係を鑑みれば、そうなってしまうのは必然なのだろう。だけど、この場合の状況はもっと複雑なものだった。
三生は彼女の秘密を知っていて、僕はその後の普通ではない『口止め』の場面に立ち会っている。その秘密こそ聞いてはいないけど、三生の彼女に対する想いだったり、彼女に執着するその様子は知っている訳で……。
赤緒さんが僕に警戒を抱く理由は、恐らくその辺りにあり。もしかしたら、この時の僕たちの心理はある意味で似ていたのかもしれない。
互いに何処まで踏み込むべきなのか、その判断に迷いが生じている……?