この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
「フフ、へえ……なるほどな。少しだけ、話が見えてきた気がする」
「瀬山……くん?」
何時も余裕すら漂わせるかのような、その微笑。しかし今の瀬山くんには、そんな面影はなかった。口元に笑みを携えながらも、その笑い方は何処かニヒル。
「その後、礼華は――喜嶋が聞いていたことに、気がついていた。つまり、そういうことなんだろ」
「う、うん……」
ギラリと視線を向けられ、僕はやや怯みながら頷く。何も普段と違う態度に対してではなく、短い会話でその結論に達していたことへの驚きが先んじていた。
すると、瀬山くんは更に言う。
「今日、喜嶋が来てないことも――そこに、繋がるのか?」
「わ、わからない。僕が知りたかったのも……その部分なんだ。だから僕は、赤緒さんに……だけど、結局は……」
その後、僕と瀬山くんは、黙って顔を見合わせていた。だけど、望んでそうしてた訳じゃない。次の言葉を探していた。少なくとも、僕はそうだった。
暫くその膠着状態は続き、それを先に破ったのは――
「フ……」
と、吐息のような笑みを零した、瀬山くんの方だった。
それは、何時もの彼の微笑。それを取り戻した瀬山くんは、僕の肩をポンと叩き――そして、言う。
「乾、悪いな。もしかしたら、俺……迷惑をかけていたのかも、しれない」
「え? ぼ、僕は別に……瀬山くんを、責めてる訳じゃ……ない、けど」
「いいんだ……。それより、この前の『切っ掛け』がどうのって話――憶えてるか?」
「もちろん……憶えてるよ」
「そうか……それなら、よかった」
「……!?」
その時、彼は――――確信ではなく、たぶん何かを予感していた。
この瞬間の瀬山くんの、想いが――否、彼の長く秘めていた想いが明らかになるのは――
――この日の最後の授業となる、ロングHRに於けるその一幕でのこと。