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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】

「フフ、へえ……なるほどな。少しだけ、話が見えてきた気がする」

「瀬山……くん?」

 何時も余裕すら漂わせるかのような、その微笑。しかし今の瀬山くんには、そんな面影はなかった。口元に笑みを携えながらも、その笑い方は何処かニヒル。

「その後、礼華は――喜嶋が聞いていたことに、気がついていた。つまり、そういうことなんだろ」

「う、うん……」

 ギラリと視線を向けられ、僕はやや怯みながら頷く。何も普段と違う態度に対してではなく、短い会話でその結論に達していたことへの驚きが先んじていた。

 すると、瀬山くんは更に言う。


「今日、喜嶋が来てないことも――そこに、繋がるのか?」


「わ、わからない。僕が知りたかったのも……その部分なんだ。だから僕は、赤緒さんに……だけど、結局は……」


 その後、僕と瀬山くんは、黙って顔を見合わせていた。だけど、望んでそうしてた訳じゃない。次の言葉を探していた。少なくとも、僕はそうだった。

 暫くその膠着状態は続き、それを先に破ったのは――


「フ……」


 と、吐息のような笑みを零した、瀬山くんの方だった。

 それは、何時もの彼の微笑。それを取り戻した瀬山くんは、僕の肩をポンと叩き――そして、言う。


「乾、悪いな。もしかしたら、俺……迷惑をかけていたのかも、しれない」


「え? ぼ、僕は別に……瀬山くんを、責めてる訳じゃ……ない、けど」


「いいんだ……。それより、この前の『切っ掛け』がどうのって話――憶えてるか?」


「もちろん……憶えてるよ」


「そうか……それなら、よかった」


「……!?」


 その時、彼は――――確信ではなく、たぶん何かを予感していた。

 この瞬間の瀬山くんの、想いが――否、彼の長く秘めていた想いが明らかになるのは――


 ――この日の最後の授業となる、ロングHRに於けるその一幕でのこと。
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