この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
※ ※
「他に何か、連絡事項は?」
そう言ったのは、委員長の――西慶介だ。黒板の前に立つ西くんが、クラスの一同を見渡している。だけど、誰も発言――『連絡事項』はないようだ。
ロングHRの冒頭、およそ五分。各委員会からの定例報告は、西くんが粛々と仕切ったことにより既に終了している。
今は六月。特に大きな行事を控えていないこの時期は、週一回のロングHRで話し合うような議題に乏しい。こんな場合、余った時間は自習に充てられるのが通例。たまに担任の北村先生が気まぐれに、雑談を聞かせるようなこともあった。
そんな流れを熟知している西くんは、傍らに座る北村先生に訊ねる。
「特に議題もなさそうです。先生の方からは、何か? 特になければ、自習にすることを提案しますが」
「うん……どうだろうな」
しかし、北村先生は珍しく歯切れが悪い感じだ。顎に手をやると、何やらじっと思慮してる様子。
すると、その時だった。
「議題なら、あるだろ。色々と――」
一人の生徒がボソッと、そう呟く。
その声に対し、西くんは素早く応じる。
「佐川――発言があるなら、挙手してからにしろ」
そう名指しされた佐川くんはニヤつきながら――
「いやあ、まあ別に……いいんだけど、さ」
とりあえず、そう惚けていた。
「……」
僕は俄かにざわめき始めている教室の空気を、その肌身に感じ始めている。