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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
「ホントに知らないんだな。一つ――こんな噂が広まってること」
「――噂?」
西くんは訝しげに、眉根を寄せる。
「噂って言うか……目撃証言なんだけど、さ」
したり顔の佐川くんは、周囲の反応を窺いながら――
「それは――先々週の週末の夜のことです。酒に酔って夜道を歩く、一人の女性の姿がありましたとさ。それはなんと、このクラスの副任の佐倉瑞穂先生だったのです。その後、先生は自分のアパートに帰ったようです――が。ここでクイズです」
悪ふざけとしか思えない口調で、そんな風に言った。
「――?」
流石に呆気に取られている、西くん。彼だけではなく、大半の生徒がキョトンとしながら、佐川くんを見ていた。
その注目を一身に集めて、佐川くんはその『クイズ』とやらの出題を果たす。
「そこに付き添って、一緒にアパートの部屋に消えた男がいました。それは、皆さんも知っている人物ですが……。さて、その人物とは一体――誰でしょうか?」
それを受け。ざわっ――と、教室内の空気が揺れる。
「……」
まさか……?
その中にあって、僕が言い様のない不安に駆られた、その訳は……。
「下卑た噂話だな……。一応、聞いてやるから――もったいぶらずに、さっさと言ってみろ」
呆れ顔の西くんが、そう促して――。
「ちぇっ……つまんねー、奴。でもまあ、仕方ないから正解を教えてあげよう」
佐川くんは、そんな前置きをした後――。
「去河だよ。現在休学中の――去河要二だ」
その名を、皆の前で告げた。