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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】

「き、決め手とは……一体、どの様な?」

「そうですな。例えば――」

 その男――白岩さんが、そう言いかけた時だった。


 チャ……!


 私が手にしたドアノブが、微かな音を立てる。


「礼華――帰ったのか?」

「うん……今」

 父に声をかけられ、やむを得ず姿を見せた――私。

 それを振り向いた、白岩さんは――

「ほう……娘さんが、ね」

 サングラスの奥のギラリとした視線を、私へと浴びせた。

 年齢は三十代くらい。長い髪を後ろに束ね、頬骨の張った顔は浅黒く日焼けしている。

「お、お父さん……どうかしたの?」

 およそ出会ったことのない、白岩さんの只ならぬ雰囲気に、私は怯えていた。その不安を隠すように、父の顔を見ると――。

「子供のお前が、気にすることじゃない。自分の部屋に、行ってるんだ」

 父は私から顔を背けて、そう答えていた。

 しかし――

「いや――ちょっと、待ちなさいよ」

 白岩さんは父を制して、ソファーから立ち上がる。

「あ……!」

 思わず震え出す、私を前にして――白岩さんは、舐めるようにじっくりとした目線を、顔から足先まで這わせていった。

 そして――ニヤッと、笑う。


「赤緒さん――アンタ、ついてたな」


「……?」

 その時の私は、その言葉の意味がわからなかった。


「いいでしょう。金の方は私の処で、用意いたしますよ」


 この時に、私がわかっていたことは――父がこの白岩さんから、お金を借りるのだということだけ……。
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