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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
「……」
私は足元の大金を、光のない瞳でじっと見つめていた。結果的にこの身を売っている――とはいえ、それは私自身がお金を求めたからではない。
白岩さんの用いた『商品』という言葉が、いみじくも物語っていた。私は売られて、お金の対価となり。『商品』である自身が、それを得るものではない。
では何故――私は自分の望まない場所に、墜ち続けてゆくのか?
その理由はきっと単純で――だからこそ逆に、私にとっての不条理だった。
これまで既に幾人もの男を前に、その未熟な身体を差し出しながら、も。私が真に己の根幹にある想いを辿ろうとしたのは――この時だったのだろう。
男は大金を「くれてやる」と笑う。きっと私がお金を欲しいのだと、そう思って。けれどだとするのならば、それは大きな間違いだ。
私はまだ、お金の価値すら知らない。否、その悪しき側面にのみに振り回された故に――この私があるのだから――。
「なっ……?」
思わずそう声を漏らす、その男の前で。
ギュウッ……!
「……」
私はまるで、憎悪の念を込めるように――
足元に散らばる大金を――その足で、踏みにじっていた。