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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】

 突き詰めてみても、その行為に理由などあてがうことはできない。守るべきプライドなど、既に念頭にはなく。お金への憎しみだと言うのなら、それが見当違いであるのも、わかっていた。

 それでも、私は――


 ギュ……ギュウ!


「……」

 憑りつかれたように執拗に、それを自分の足で強く踏みつけ続けた。

「フ……フハハハハ!」

 そんな私を見て、男は笑い。ソファーから身を起こすと、初めて自ら私の元へと歩み出した。

「なかなか、面白いじゃないか」

 そして、私の顎を乱暴に掴むと、顔をまじまじと見下ろす。

「名前は?」

「……礼華」

「そうか……では、礼華。今、私に向けたその瞳――それを買ってやろう。それを失って、只の人形になる時まで、ここに来ることを許してやる」

「……!」

 男の言うことを、私が正しく理解した筈もない。その時の自分が瞳に何を宿していたのか、それも定かではなかった。

 だが……ひとつ、わかったこともある。私の人生を左右してゆくのは、大人の男たち。そこに付属している私は、未熟な女の部分をひたすら食い物にされている。

 それは、私が女に生まれたから。私のそれまでの短い人生に於いて、形成されつつあった曖昧な個なんて、何の意味も有してはいなかった……。


 だったら……せめて、その心は抗おう。せめて、この大人たちを蔑み――そして、憎み続けてみよう。


 この最低な境遇の中で、それは目覚めていた。赤緒礼華という私の、自我と呼ぶべきものの欠片で、あったのだろう。
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