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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
「一体、誰だ――こんな時間に?」
面倒そうにしながら、それでもベッドから身を起こしたのは、男にとってこの部屋が特別な場所であったからであろう。
もちろん自宅でも仕事場でもなく。このマンションの部屋は、この男の隠れ家的な場所。幾度かここに通う中で、私は何気にそう悟っていた。
つまり、この部屋を訪れる者は、至極限られている――ということ。
「……」
リビングに行った男の様子を、私はベッドの上に佇みながらも、密かに窺っていた。
すると、インターホン越しに応対をしながら――
「ここへは、来るな。そう言ってある筈だぞ」
僅かながら慌てたように、男は言った。
幾度かの、やり取りがあった後。
「チッ……わかった。入って来い」
舌打ちをしながら、男は答える。どうやら訪問者は、入室を許可されたらしい。
そして、男は急ぎ寝室に戻ると、私の顔をジロリと睨む。
「いいか。物音を立てるな。じっとしてろ」
男はそう言い放つと、寝室の灯りを消しバタンとその扉を閉ざした。
「……」
暗闇に残された、私の胸が不意に騒ぐ。
数分後――部屋に人が通された、その気配を察知して。私は寝室の扉に、そっと耳を当てる。
すると――
『久しぶりだね――父さん』
「――!?」
私はそんな声を、聴き取っていた。