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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
『進路……?』
『うん……何となく、一人で考えてたんだ。俺、高校生になったら、家を出ようかと思ってる』
『なんだと……』
どうも、予期せぬ様子らしく。男の声の響きにも若干の驚きが、表れていた。
『どういうことなんどだ。宗助……?』
『東京にでも出てみようかと……ふとそんな風に、思うようになってさ』
『東京だと? 目的は何だ』
『目的は……バスケ。強豪校で揉まれてみるのも、いいかなって……』
『嘘を言うな。お前がそんな戯事に、本気になるタイプでもなかろう』
『酷いな……。俺のことなんて、ろくに見てもいなかったクセに、さ』
『それくらい、見てなくてもわかる。それに――バスケをやりたいなら、何も東京でなくともよかろう。県内にもお前のレベルに見合う、高校はある筈だな』
『それは……』
『何よりも、お前は私の跡取りだ。詰まらん事にかまけて、成績を落とすような真似は許さんぞ。大体、お前を溺愛している母さんが、許す筈もなかろう。東京ならば、大学に合格してからで十分だ』
『……』
取りつく島を見せない男の言い様に、ソウスケの言葉が途切れた。すると――
『そう言えば……あの小生意気なガキは、元気にしてるのか?』
『……?』
『ほら、近所の開業医の倅だ。お前の幼なじみ、なのだろう』
『西……西慶介、だ』
『ああ、そんな名だったな。昔、その両親と話す機会があったのだが。息子は神童だなどと、嘯いてみせたぞ。ハハハ――この私を前に、よく言えたものだ』
『アイツは、今でも……学校一、優秀だ』
笑った父を窘める気持ちがあったのか、ソウスケは厳しい口調となった。そして――
『ならば、ソレと同じ高校に行けばよかろう。近くに切磋琢磨できる相手がいるのは、お前にとっても望むべきことだぞ』
男がそう言ったのを受けて、ソウスケの声には更なる感情が影を落とす。
『やっぱり、父さんには……否、俺の気持ちは、誰にも……わからないみたいだ』