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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
「礼華――キミはもう、自由だよ」
「え……?」
数日後――私の前に姿を現して、白岩さんはそう、言った。
「何故、そんな……?」
「瀬山紘一郎氏が、礼華のお父さんの借金の一切を、尻拭いしたのさ」
白岩さんが運転する車の助手席で、私は初めてその名を耳にする。それがあの男の本名なのはわかったけれど、それだけで納得がいく筈もなかった。
「でも……結局、借金は残るんでしょ。借りた相手が、また変わっただけ……」
「いや……それは、かなり違う。瀬山氏が、謝金の督促をするようなことはないだろう。氏にすれば、大した金額ではない、ということもある。もちろん、出来得る範囲で返すと、礼華のお父さんと、口約束程度は交わしたようだが……ね」
含みを持たせつつ、白岩さんはそう話す。
「……」
そして、黙って俯いた私を、白岩さんはサングラス越しの目でチラリと見やる。
「どうした――嬉しくは、ないのかい? もう嫌な男たちの、相手をする必要はないんだ。最も、それを強いてきた男が、言えたことでもないんだが……」
「そうじゃなく……だって……私、何も……」
わからなかった。その急な展開に、私の考えが追い付いていかない。そして、白岩さんの用いた『自由』という言葉への懐疑もある。
でも、恐らくは……否、間違いなく、あの夜のことが影響して……。けれど、それがどう転んで、そうなっているのかは、まるで見当もつかない。
すると――
「困惑するのも、無理はない。だから事情は、彼に聞いてみるといい」
「彼……?」
「礼華を待っている人がいる。実は今、そこに向かっているんだ」
「それは――誰なの?」
「会えばわかる。そして、これは内密なことだ。本来、俺は関与すべき立場にはないから、な」
白岩さんは、そうはぐらかすが。私にもそう多くの、心当たりがある筈もなく――。