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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
「え……?」
宗助は素直なる疑問を、その顔に浮かべた。成長の途上。何処か中世的なその綺麗な顔立ちは、私を期せずして苛つかせている。
私が彼の好意を捻じ曲げて受け取ったとされても、それは仕方がなかった。それでも私にしてみれば、宗助がしたことは恵まれた境遇の上でのことであり。哀れな私に対する施しなのだと思えてしまう。
すなわち――とても、高い頂から見下ろされている、気分だった。
その恩を盾にして、目の前の怜悧な少年が父と同様のことを私に求める――そんな可能性なんて、まず皆無なのだろう。如何に擦れてしまったとはいえ、私だってそれくらいのことは、彼を見ていれば――わかる。
けれども私にとっては、寧ろ何かを要求された方が気楽だ。そう思ってしまうまでに、私は汚れた俗世間の裏側に馴らされている。それは裏を返したのなら、宗助が高い場所に立っているのではなくて、私が地中の深部から這い出ていない――その、証拠だった。
だから、宗助に敵意を向けようとしている、私は――私をキライ。
「……」
申し訳なさそうにする宗助の視線は、その意志に反して――否応なく彼方までも、私を苛もうとしている。
そのすれ違う想いが、私に――誤った道筋を辿らせようとしていた。
困惑した様子の宗助に変わり、私は静寂を埋めるようにして、この口を開く。
「白岩さんを通じて、今――こうして会っているということ。つまり貴方は――私が置かれていた境遇を、正しく理解してる。そうなんでしょ?」
「あ……いや」
口籠る宗助だけど――その問いには、答えてもらうまでもない。そう考えた私は、続けて捲し立てた。
「そう――貴方が知っている通り。なにも、貴方の父親だけじゃないわ。私がどれ程までに、この身体と心根を様々な大人たちに、汚され踏みにじられてきたことか。それを承知した上で、貴方が私に謝ったって――そんなことに一体、どんな意味があるというの。それで私の何かが僅かでも救われると――――そんな風に、思えて?」
違う……私だって、こんなことを言いたい訳ではない。
その時――それでも溢れ出そうとする言葉が、私たち二人を意外な形で結び付ける――その発端となった。