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第15章 じゅバく 【赤緒礼華】

　私の家庭環境といえば、それはどうしようもなく取り留めもないものだった。

　高校に上がる際、私と父は公営住宅へと引っ越すことになる。父は紹介された工場での仕事をして、細やかながら新たなる生活が始まっていた。

　追い立てられることがなくなったとは言え、当然ながら借金が無くなった訳ではない。宗助の父親に、月々僅かながらでも返済する責務は残されていた。例えそれを迫られなくとも、それが人としてあるべき姿の筈。

　父がどう考えていたかなんて、私にはさして興味がなかった。それでも肝心なことは、どんな形であろうとも、あの男に借りがあるという現実。まず、それが一つの動機となる。

　しかし――一度、どん底を味わった上で、期せずしてそこから拾い上げられる形となった、父である。最早その中で、プライドは枯れ落ち、気力もすっかり萎え。仕事で得た僅かな報酬は、酒とギャンブルに消え失せ。そんな自堕落な日常が、私の目の前には転がっていた。

　そして、何よりも私には、その父に売られてしまったという、如何ともし難い現実がある。そんな私たち親子に、真面な関係が築かれる隙間など残されていなかった。

　父の居る家に帰りたい、そう思う訳もなく。そうなれば、家を出たいと考えるのも当然。それが、二つ目の動機。だから、とても皮肉なことだ、けれど……も。


　私はお金を必要とし、今度は援助交際という名において、再びこの身を売り始めるのだった。


　そんな事情も全て、言い訳なのかもしれない。私は結局――自分の身に染みついたものを、振り払うことができなかった。それこそが、私の弱さの証だ。

　そして、自らの意志に於いて、そこに至っていること。結果そうしたことにより、私は宗助との関係を見つめ直す必要に苛まれてしまったのだ。