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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
授業より開放された生徒たちが行き交う、廊下で。
ペコリと頭を下げる私に、乾くんは顔に戸惑いを表した。
「えっ、どうして……藍山さん、が……僕に?」
そうした理由を問われて、私は――。
「覗き見るような、真似を……して、しまっていたから」
それは、彼の書いていた小説――それを、内緒で読んでいた、ことに対して。
偶然知り得た、ペンネームから辿り。乾くんがそれを書いているのだと解りながら、それを読んでいた事実。それを明かした今、やはりそれは気持ちの良いことではなかった――だろう、と。乾くんの立場になれば、それはそうなのだ。
彼の想いが綴られたものであるが故に、その心情は尚更――。剰え、私はその想いが自分に向いてると、確信してしまっているから。黙って覗き読まれていた彼にしてみれば、ともすれば私は嫌な女とされても、仕方がなかった。
頭を下げ、それを上げながら。乾くんを間近に見て、今度は私から問う。
「あの小説は……乾くんと、私の……そう思っても、いい?」
「あ……いやっ、それは……ねっ」
即座に顔を赤く染めて、乾くんは狼狽えている、けれど――
「もし違うのなら……私は、自意識過剰で……。だから、今の乾くんの……その十倍も、恥ずかしい」
その不安を示すと、私に恥をかかせまいとして、なのだろう。
乾くんは慌てて、こう言ってくれた。
「そんなっ! あれは、その……藍山さん、の言う通りで……。僕の勝手な想いを……書いたもの、なんだっ!」