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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「――――」
音を発することを放棄したような、私の口。
やむを得ずに私は、持参した鞄に手を伸ばしていた。
そうして、から――私がその中より、取り出したもの。
それを、目にして――
「――――――――!?」
北村先生は、およそ生徒の前では見せないような、そんな表情と変わった。
私にとって、先生は揺るぎのない、大人の男性。けれども、今。落ち着き払って冷静な、何時もの先生とは違うその顔を、確かに私に見せている。
「……」
「……」
先程までとは違う沈黙を、この狭い空間に与えたのは、楓姉さんの――二冊の本。
別にそれを盾に、私が先生を責めようとする、訳もなく。そうできる程に、私はその本たちの有する意味を知らないから……。乾くんが読み解いてくれたものは、私がたった一歩を踏み出す為の勇気として、既に消費していた。
でも明らかに、その本たちは――先生の脳裏を揺らし始めて、いる。
そうして、額から一筋の汗を伝わせて、先生は――
「フ、フフ…………若気の至り……か」
「――?」
自嘲気味の笑みと、糸の知れないそんな言葉を、呟くのだった。