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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「若気……の?」
ようやく、私は言葉を発して――
「ああ……そうだ」
北村先生は、それにそっと頷く。
それからじっと目を瞑った先生は、恐らく自身と向き合うように、して、から。その後、再び目を開き――私を見据えている。その時の顔には、既に動揺は見られなかった。
その代わりとして、その眼差しが得たものは、覚悟――なの、だろう、か。
「つい柄にもなく、取り乱して……すまなかったな」
「いえ……」
「藍山は――どうして、この本を――俺に?」
「それは……これが……楓姉さんの、本……だから」
たどたどしくも、やっと……私は、その名を口にした。
「そう……か」
噛みしめるようにそう言って、先生はまた、笑う。それは、さっきのような自嘲とは違い。何処か懐かしむような、そんな微笑。しかし、それはすぐに苦しげなものへと、微妙にそのニュアンスを変化させた。
「藍山の決意を前にしながら。それでも、違ってほしいと、愚かしくも考えた。この本を眼前に突き付けられたのは――その罰なんだろう、な」
「罰……?」
そう差し向けた疑問に、先生は先ず――こう答える。
「俺はお前の姉――藍山楓に、この本を渡している」
「――!」
私の辿った細い糸が、繋がりを見せた。
しかし、北村先生が私に示した答えは、それに留まらない。
「藍山は、その本の著者について、何か知っているのか?」
「いいえ」
「まあ……そう、だろう」
ふっとため息をついてから、本の一冊を手に取り、それをパラリと捲り――すぐに閉じる。
「……?」
そんな先生の所作を眺める私に、先生は――それを、告げた。
「この本を書いたのは――この俺だ」
「え……?」
その想いもよらぬ事実が、私を戦慄――させる。