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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》

「――!」


 ハッと目を見張った、私の視線の先――。

 滑らかな手すりの上面を、加速して滑り落ちていった、本が――

 バサッ! と、打ち付けられた床の上で、無残にもその頁をはためかせていた。


「なっ――何を!」


 それは、思わず。

 借りてきたばかりの本にしてみれば、それはあまりに謂れ無き扱いであった――から。

 私はキッとして、非難の目を彼らに浴びせる。

 だけど――二人は、その程度で怯む筈もなかった。

「あ、ゴメンゴメン。でも、わざとじゃないし」

「ふーん。そうして怒った顔も、なかなか――」

 ハハハハ――! と、顔を見合わせて、彼らは笑う。

「……」

 何が可笑しい、の? そう、感じながら、まだ、その場を動けずにいる――私。

「まあまあ、そんなに睨まないで。じゃあさ……お詫びに何か奢るから、それで許してよ」

「それにさぁ――こうしてちょっかい出してるのも、俺たちが藍山さんのこと、気になってるからなんだし。ね――そう考えれば、悪い気しないでしょ?」

 私の顔色を窺うような、二人。

 その顔をじっと見据えて、私は言った。

「……嫌い」

「ん――なんて?」


「本を粗末に扱う人なんて、私は――嫌いだから」


 私とすれば、珍しく明快な言葉。その想いは、正確に彼らに伝わる。

 それ故に――

「は? 何、言ってんの、この女――」

 二人の表情も、不快な感情を隠そうとはしなかった。

「――!?」

 ジリッと、二人は更にその距離を詰め、私に迫ろうとしている。

 そんな時――


「オーイ。こんな処に、本を放置してるのは――誰だぁ?」


 私の耳に、その声は届いていた――。
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