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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「――違う?」
「わ、私は……本を読むのが、好きな訳でっ」
「ああ、だから――そうなんだろ」
「あ……」
私、何を言ってる……の?
妙な気を回し、口走ったことが恥ずかしく。頬がカッと赤くなってゆくのが、自分でもわかる。
でも、先生はそんな私を変に思う様子も見せず、淡々として私に話す。
「国語科の教師としては、嘆かわしいことなんだが。最近の高校生は、すっかり本を読まくなっているらしい」
「そのよう、ですね……」
「だからな――藍山」
「はい……?」
「お前のような生徒がいてくれて――俺も少しだけ、ホッとした気分なんだ」
「――!?」
初めて私に向けた、微かだが優しげな、その微笑み。
それを仰ぐ私の中に、スッと何かが腑に落ちるような感触が生じている。
まるで本を読む自分が、報われたような――そんな気がして。
私はそれだけのことが――只々、嬉しかったのだと、思う。