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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
所在も無なくて、私は逃げるように教室の外へ出て行く。
すると――
「オイ――藍山」
「――!?」
その声にドキリと胸を躍らせ、しかし私はソロリと後ろを振り向く。
私を追って来た――訳では、なくとも。少なくとも私の存在を認めたから、その名を呼んでくれている。
たったそれだけのことで歓喜してるのだと知れば、自分でも最早呆れるしかないのだ。
「な……なんで、しょうか?」
紅く染まりそうな頬を隠すように俯くと、口から出た言葉のニュアンスはまるで迷惑であるようでさえあり。感情と裏腹な自らの振る舞いが、どうしようもないくらいもどかしい。
しかし、北村先生は私の態度など、一向に気にする様子もなかった。
「そう構えなくていいぞ。左程、大した用事でもない」
「別に……」
それは、消え入りそうな声。構えるつもりなどなく、私は気持ちを隠すことで精一杯なだけ……なのに。
「この前の本――もう、読んだのか?」
この前の……先生に拾ってもらった本? もう二週間も前のことだから、かなり前に読み終えている。
黙って頷くと、先生はスッと手にしたものを私に差し出した。
「……?」
私は戸惑いを浮べて、その顔を仰ぐと――
「同じ作者の本だ。よかったら、読んでみるといい」
先生はそう言って、自然と口元を綻ばせて――くれて、る。