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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
私は差し出されたその本を凝視したまま、その身体は硬直させた。それでも何とか口を動かそうとしたのは、先生の真意が知りたかったから――やはり、そうなのだろう。
「あの……私?」
「ああ、もしかして、もう読んでいたのか。だったら、別に気にしなくていいが」
「いえっ……そうじゃなく。読んではいなくて……だけど」
「もちろん、無理して読む必要はないぞ。昨日、たまたま部屋で見つけてな。それで、ふと藍山がこの作者の本を持っていたのを、思い出しただけなんだよ。個人的には好きな本ではあるが、別に押しつけるつもりはない」
「ち、違う――んです!」
「ん?」
懸命に首を横に振った私を、先生が不思議そうに見つめていた。
そうして対峙してるだけで、周囲の空気が薄くなる気がして。只でさえそんな状態なのに、一向に噛み合わない会話に私だけが焦ってゆく。
とりあえず意識して、私はゆっくりと呼吸をひとつ。そうして、胸の息苦しさを、少しを和らげて――
「私、その本……読んでみたい、です」
今度こそ正確に、自分の意図を言葉に乗せた。
すると、先生は少しだけ嬉しそうにして。
「そうか」
と、とても端的に言う。