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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
夏休みに入ると、家にほど近い図書館へと足しげく通うのが、ほとんど私の日課と化していた。そこはこじんまりとした私立図書館の支所であったが、そのため来館者も比較的少ない。落ち着いて過ごせるので、私の性分にも叶うお気に入りの場所だった。
私は概ね、開館と共にそこを訪れて行く。午前中の間は、学習室でその日の分の夏休みの課題等を済ませ。その後で、居並ぶ本棚の間を漂っては、じっくりと蔵書を吟味するのだった。
そうしてはいても、毎日ひたすら本を読もうという訳でもない。本を読むことも然ることながら、私は本の匂いのするその空間自体が、好き。
本棚に並ぶ背表紙を順に指でなぞりながら、タイトルから内容を想像してみたり。それだけでも世界が広がっていくような、そんな気がしていたのだ。
時折こんな自分は、ちょっと変なのかもと思ったりもしている。少なくともクラスの中では、既に幾分浮いているのは自覚していた。
そう言えば妹の栞が、出がけにこんな風に言ってる。
「まぁた、図書館に行くんだね。ねえ、知ってる? お姉ちゃんみたいな人のこと、活字中毒って言うんだってさ」
やや拗ねたような妹の顔を思い浮べ、私は思わずクスっと笑む。
「少しは栞とも、遊んであげなくちゃ、ね」
私はそう呟くと、後ろ髪を引かれながらも、この心地よい空間を後にしようとしていた。
そうして、置いてある荷物を取りに学習室へと、戻った時である。
えっ……北村先生……?
その一番後ろの席に、私はその姿を見つけた。