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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
だけどそれは、やはり秘めていたかった部分であるのかもしれない。
「ハハ、可笑しいだろ?」
そう言って、少し照れて笑う先生の顔が、それを私にそう示していた。だから拍子とはいえ、パソコンを覗き込むような真似をしていることを、申し訳なくも思う。
「いえ、そんなこと……」
それ処か、私は……。その時に抱いた気持ちを言いあぐねてる私に変わり、先生は何時になく饒舌に語った。
「大学で文芸サークルに所属していた、その名残りなのだろうな。だが当時は、作家を目指そうなんて、そんなつもりは全くなかった。結局はチャレンジすることもなく、時が来ると何となくの成り行きで、教師になっていた。仮にも教え子を前にして、言うべきことではないんだが……。自分の将来なんて、本気で考えてなかったからな。それで今になって、こんなことをしてる。そんな、訳さ」
「……」
私は黙って、話を聞く。『当時は』と言ったのは、今は違うから?
「悪かったな、藍山。こんな話を聞けば、がっかりしたんじゃないか?」
「え?」
「一見、何の淀みもなく、教壇に立っている教師。その大人の男が、実は人生に迷いこんな風に足掻いてると知ればな」
やはり、そう。先生は今、本気で小説を書いている。そう感じて、私は――
「いいえ、がっかりなんてしません。寧ろ、その逆で――」
「逆……?」
「それは……その」
先生にじっと見つめられて、私は――自分の中で急激に高まるものを、全て吐き出してしまいたい。
そんな衝動に、駆られていた。