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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
私、藍山楓も、三年生となった。
その年の秋口を迎えると、些か呑気な私であっても自分の進路に頭を痛めたりしている、そんな時期。一応は、大学への進学を希望していた。
流石に読書ばかりに、時間を割く訳にはいかず。担任の先生との面談では、受験に際して苦手教科の底上げが必須であるとされた。
そんな、あの日の放課後。私の姿は学校の図書室にあるのだ、けれど。
「……」
すっかり常連と化したその場に於いても、今は大半の時間を勉強に当てている。そして時折、本棚の方を横目で眺めては、むずむずともどかしい気分となるのだ。
それ故、月に一度の北村先生の所有蔵書についても、暫くは御無沙汰である。もちろん、私が赴けば先生は何時でも快く本を貸してくれるのだろう。だから、その点にあっては、私の遠慮深い性格が災いしていると言えた。
そんな私であるから、北村先生の著書の進行についても、まるで知らない。あれから何度も先生と話す機会があっても、私はそれを訊ねることしない。否、できなかった。
教師としての北村先生は、私が知る限り決して職務をおろそかにする筈もなく。私に話してくれたように、現状に満ち足りてはいなくても、その部分はやはり大人なのだと思えた。
だからこそ、簡単なチャレンジである訳もなく。気軽に触っていい個所ではないのだと、私は自分に言い聞かせている。
「今日は……帰ろ」
そんな想いもあって集中を欠くと、私はそんな独り言を漏らした。この日は早々に、図書室から引き上げて行くことに。
そして、昇降口へと向かう途中であった。
「藍山――帰るのか」
「――!」
階段の上から聴こえた声に、私はピタリと歩みを止める。
その年の秋口を迎えると、些か呑気な私であっても自分の進路に頭を痛めたりしている、そんな時期。一応は、大学への進学を希望していた。
流石に読書ばかりに、時間を割く訳にはいかず。担任の先生との面談では、受験に際して苦手教科の底上げが必須であるとされた。
そんな、あの日の放課後。私の姿は学校の図書室にあるのだ、けれど。
「……」
すっかり常連と化したその場に於いても、今は大半の時間を勉強に当てている。そして時折、本棚の方を横目で眺めては、むずむずともどかしい気分となるのだ。
それ故、月に一度の北村先生の所有蔵書についても、暫くは御無沙汰である。もちろん、私が赴けば先生は何時でも快く本を貸してくれるのだろう。だから、その点にあっては、私の遠慮深い性格が災いしていると言えた。
そんな私であるから、北村先生の著書の進行についても、まるで知らない。あれから何度も先生と話す機会があっても、私はそれを訊ねることしない。否、できなかった。
教師としての北村先生は、私が知る限り決して職務をおろそかにする筈もなく。私に話してくれたように、現状に満ち足りてはいなくても、その部分はやはり大人なのだと思えた。
だからこそ、簡単なチャレンジである訳もなく。気軽に触っていい個所ではないのだと、私は自分に言い聞かせている。
「今日は……帰ろ」
そんな想いもあって集中を欠くと、私はそんな独り言を漏らした。この日は早々に、図書室から引き上げて行くことに。
そして、昇降口へと向かう途中であった。
「藍山――帰るのか」
「――!」
階段の上から聴こえた声に、私はピタリと歩みを止める。