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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
「あ……」
階段より降りてくるその姿を認め、私はそんな声を発すると一気に全身を硬直させる。
私がそんな感じなのは、それまでと同じ、だったのだけど――。
「最近は、本を借りにも来ないようだが。大変なのか――勉強?」
「えっと……どうも、その様です」
「フッ――まるで他人事みたいな、言い方をするんだな」
「あ……ホントですね。私って、変だな」
微笑む北村先生に、私も心と身体の緊張を解いた。
授業では顔を合わせていても、こうして言葉を交わすのは久しぶりのこと。それだけにこの瞬間を新鮮に感じつつも、何故かそれまでより自然な自分でいられるように思う。
そして実際、自分でも不思議なくらいに、私の気分は晴れやかだった。
「しかし、早いものだよ。藍山も、今や受験生とは。新入生だった頃が、つい最近のように感じるが、な」
「そんなこと言うと、まるでオジサンみたいです」
「それは、無理もないさ。お前たちから見れば、俺だってその部類だろ」
「だけど先生って、女子に人気ありますよね。授業が終わると、何時も何人かの子に囲まれたりして――」
私はその度に、彼女たちを羨ましく。
「連中は、からかっているのさ。まあそう見せて実は俺の方が、敢えてからかわれてやっているという訳だ。どちらにしろ、人気というのとは違うみたいだぞ」
くすっ――として、私は思わず笑みを零す。